嫌いなあいつが気になって

「琉生、あんた何したの?」

 修了式を終えて凛華たちと遊び回ってから帰宅した俺を待ち構えていたのは明らかに怒っている姉ちゃん。

「は?」

 目を細めながら靴を脱ぐと、グッと強めに腕を掴まれる。
 そのまま睨み落とすと、姉ちゃんは俺の腕を引いた。
 リビングには入らず玄関の脇で手を離されたが、こっちを見た姉ちゃんは怒りの中に悲しみを滲ませている。

「……何?」

 息を吐き出して聞くと、姉ちゃんは拳を握って俺の胸を殴ってきた。

「だから、何だよっ!!」

 何度も殴られてさすがにその腕を掴むと、姉ちゃんは涙を堪えながらこっちを見上げた。

「せいくんはどうしたのよっ!」
「……は?」

 姉ちゃんから宮部の名前が出てくるとは思わなくてすぐにはちゃんと声が出ない。

「最近うちにも来ないでしょ!?昨日、仕事終わりにファミレスに入って行くせいくんを見かけて……でも、私がみんなと飲んで『解散っ!』ってなってもせいくんまだファミレスに居たみたいで……」

 姉ちゃんの声は震えている。

「……何回か私、帰るせいくんを車で送っていったでしょう?お母さんは夜の仕事をされているとは聞いた。でもね、一度だけ……」

 ギュッと姉ちゃんは俺のシャツを握って顔を伏せた。

「……何?」

 その意外と小さかった背中を撫でて聞くと、姉ちゃんはゆっくり息を吐き出す。
 顔を上げて涙を拭うと、もう一度落ち着けるように息を吐いた。