嫌いなあいつが気になって

「ちょっ!くーちゃん!マジ今日は見逃して〜ぇっ!」

 パンッと手を合わせてチラッと見ると、工藤は腕を組んで思いっきりこっちを睨んでいた。

「あのなぁ……」
「お願いっ!今日だけっ!」

 呆れたような声にもう一度手を合わせ直して片眼を瞑る。

「……何か用事でもあるのか?」
「ん?ケーキバイキングのお供にカラオケ〜っ!」

 にぱっと笑うと、ビキッと血管の音でも聞こえたくらいの勢いで工藤は俺の制服の肩口を引っ張った。

「うぉっ!って!ちょっ!!力強いって!!かわいい顔してるくせに力持ちだなぁっ!」

 イスから落ちて尻餅をついたまま工藤を見上げると、

「琉生ーっ!とりあえず、いつもんとこ居るからー!終わったら連絡してーっ!」

 凛華と二人の女の子がヒラヒラ手を振って教室から出て行く。

「あーぁ……俺も行きたいぃぃ」

 去って行くその後ろ姿に手を伸ばすと、

「自業自得」
「ご愁傷さま」

 武野とクラスの奴らも笑いながら出て行った。

「ほら、行くぞ」

 冷たい工藤に促されて渋々立ち上がってリュックを肩に掛ける。
 ため息を吐いて顔を上げると、教科書を胸に抱えている宮部と目が合った。
 サッと俯くと宮部も教室から出て行く。
 教科書なんか持って……帰りながらも勉強?ねぇわぁ。ってか、そんな勉強したいなら代わってくれよ。

「村瀬!早くしろ!」

 工藤に急かされながらもう何度目かもわからないため息を吐いて俺はその後に続いた。