嫌いなあいつが気になって

「お前さぁ……本当にそうなら勉強じゃなくてバイトしてればいいじゃん」

 宮部の手がピクッと動いて持っていたペンを握る手に力が入った。
 俺にはこいつが必死に堪えているようにしか見えない。

「……本当は大学行きたいんじゃねぇの?」

 机に肘を付いてそこに少し体を預けて宮部を見ると、宮部は眉を寄せて唇を噛んだ。

「お前、頭いいんだからそんくらい考えろよ」

 ため息を吐きつつ、あ!と思いついて立ち上がる。

「なぁ!!くーちゃんのとこ行くぞ!」
「は?」
「担任は使えよ!」

 ニヤリと笑うと宮部は心配そうにメガネを掛け直してこっちを見た。

「ほら!立てって!とりあえず荷物も全部持って……行くぞっ!!」

 無理矢理教科書とノートをまとめてペンと消しゴムは置いてあった筆箱にしまう。
 それを持たせてリュックも肩にかけさせて手を引いた。

「ちょっ!む、村瀬くん!?待っ!!」

 中に着ている俺のパーカーのフードを掴まれてグェっと喉が詰まって変な声が出る。
 さすがに息苦しくて宮部を睨むと、宮部はペコペコと頭を下げた。

「……で?何かあんの?」

 何度も下げ続ける頭を指で弾いてやると、宮部はそろりと頭を上げる。

「……お母さんと約束……してるんだ」
「は?」

 小さ過ぎる声は聞き辛くて眉が寄ってしまった。
 それにビクつく宮部はオズオズと身を縮める。

「ワガママを通して面倒を見てもらうのは高校まで。それからは働いて恩返しをするって」

 言いながら宮部は自分のスラックスを掴んでまた下を向いた。