嫌いなあいつが気になって

「はぁ?」

 美空がすっ飛んだ声をあげる。
 凛華は目を見開いてフリーズした。
 武野だって、その周りに居る野球部の奴らだって、むしろ、クラスのあまりしゃべったことがない奴まで信じられないという目でこっちを見る。

「勉強って……何?」
「え、あ……何かの例えかなぁ?」

 美空が凛華に言って、凛華は変に笑い出した。
 さすがにそんな反応はなくね?とたまたま手に付いた数学の教科書を見せると、武野は眉を思いっきり寄せる。

「熱あんじゃねぇの?」
「ねぇわっ!!」
「紫のきのことか……?」
「食ってねぇ!フザけんなっ!!」

 バンと机を叩いて立ち上がった。

「勉強するんだよ!勉強!だから、しばらく学校終わり遊び行ったりしねぇから!」

 真剣な顔をすると、隣のクラスから来てドアから顔を出していた由良が俺のおでこに手をあてる。

「だから、熱はねぇって」

 その手を退けると、しゃがんで俺の机から顔だけニョキッと出していたショートの(あん)と目が合った。

「何でそんな心境の変化が起きたんだろうねぇ」

 言われてまた一気に視線が集まってくるのを感じる。

「お、俺が勉強したら悪ぃのかよ!」
「動揺してる」
「う、うるせぇ!」

 バッと立ち上がる時に凛華と目が合って思わず顔を背けると、珍しく顔を上げた宮部と目が合った。
 それだけでドキドキしてきてどうしようもない。

「ちょ、トイレ」

 俺は教室から逃げ出してトイレに駆け込むと、無駄に上がった熱を冷ますように何度も顔に水をかけた。