嫌いなあいつが気になって

 二年になって二週間、とにかく全ての授業をちゃんと教室で受けている。
 自分の席に座って、でも、廊下に背を向けて横向きの状態であくびをすると、美空が笑いを堪えていた。

「美空、何ぃ?」
「その顔、ヤバっ!」
「あー?」

 堪えきれずに笑う美空に向かって目を細めると、人の気配を感じて顔を上げる。

「お前は、やっと授業に出るようになったかと思いきや……静かにできないなら六ページから読め」

 工藤に睨まれてとりあえず教科書を開いた。

「あ、ムリっ!」

 一応トライしようとはしたんだから少しは褒めてくれればいいのに、工藤はそのまま持っていた教科書を俺の頭に容赦なく落とす。

「せめて少しくらい読め」
「だって、ス……スデン?」

 指でさされてもわからないものはわからない。

「Suddenly」

 ため息を吐いて工藤は黒板の前に戻って行った。

「頭、痛くなるな。……もう宮部、読んでくれ」

 本当に頭を押さえて工藤が指名をすると、宮部は立ち上がってスラスラと読み始める。

「こら、せめて目で追え。今、ここ」

 工藤に教科書を指で押さえられても、俺は高過ぎず低過ぎることもない宮部の声を聞いてドキドキが止められなかった。
 真っ直ぐ立って両手で教科書を持つ手も、微動だにしないその姿も、見ているともう息苦しくなってきて慌てて前を向く。

「わからなくてもとりあえず単語だけでも追っていけよ」

 やる気になったと勘違いした工藤が満足気にまた戻って行くが、俺はギュッと教科書を握ってまだ聞こえる宮部の声にそっと耳を傾けていた。