嫌いなあいつが気になって

「くっそ……」

 普段走ることなんて体育でもそんなにしないのに息は切れるし、スプリングコートなんて暑くて脱ぐ。
 信号で停まって額の汗を拭うとその先に凛華の姿が見えた。

「凛華っ!」

 信号が変わって再び走ると、びっくりしたような凛華が慌てて足の向きを変える。

「何、逃げてんだよ!」

 追いかけると、さすがにすぐに追いついた。

「あっちぃ……お前、公園って言っといて何でここに居る訳?」

 息を乱しながら掴まえている腕はそのままで聞く。
 なのに凛華は俯いてなかなかこっちを見なかった。

「……ちょっ、凛華。さすがに喉乾いて死ぬ。公園戻って自販機で何か買うぞ」

 そのまま腕を引くと、凛華はとりあえずついてきてくれてホッとする。
 歩きながら俺はチラッと凛華の様子を窺った。
 メイクはしていないし、いつも綺麗に巻いている少しウェーブのかかった髪もただバナナクリップでひとまとめにされているだけ。
 こんな凛華、高校からの付き合いでまだ約一年しか知らないが初めてのことだ。
 こんな風にしたのは俺か?
 そう思うと何かいたたまれない。
 俺があんな変な風に逃げたから?
 変に気を持たせるだけ持たせてずっと誤魔化してきたから?

「琉生……ごめん」

 公園に足を踏み入れたタイミングで凛華がぽつりと呟いて俺はただ振り返る。
 凛華は空いた手でギュッとオーバーサイズのパーカーの裾を握っていた。