嫌いなあいつが気になって

 何となくあのファミレスを避け、図書室にも近寄らないようにしているうちに修了式を迎え、春休みになった。
 女の子からの誘いのメッセージも電話も乗る気になれなくて断る日々。

「何、あんた、どっかおかしいの?」

 遂には姉ちゃんにおでこに手を当てられて熱も測られた。その横で

「静かならいいんじゃないの?」

 快生があくびをして持ってきたコーラのペットボトルの蓋を開ける。
 プシッというその音を聞いて、俺はたぷんと揺れるその茶色の液体を見つめた。

「え?何?欲しいの?炭酸飲めないのに?」

 怪訝な顔をする快生に首を振るだけにして目を逸らす。

「琉生が元気ないとか……怖くない?」

 小声になる姉ちゃんと

「失恋でもしたんじゃないの?」

 気にせずスマホでゲームを始める快生。

「それはないっ!」

 声を出して笑い出す姉ちゃんを横目で見ながら俺はテーブルに突っ伏した。
 何か気力がなくて少し動くのも億劫で……。
 それでもぼんやり頭に浮かぶのはやっぱり宮部で、ゴチゴチと軽くテーブルに頭をぶつける。

「ちょっと!ウザいから出かけて来なさいよ!」

 ため息を吐いて背後に回ってきた姉ちゃんは手にワックスを持つと俺の髪を簡単にセットして背中を叩いた。

「はぁ?そんな気分じゃね……」

 やたらズキズキと痛い背中を押さえて振り返る。
 そこにはいつもの無表情で俺のスプリングコートを広げた快生が居た。