嫌いなあいつが気になって

 下駄箱で美空から俺のリュックを受け取る。
 正直、凛華と会い辛かった俺はホッとしていた。
 だが、美空は真剣な顔をしてこっちを見上げる。

「ねぇ、琉生ぃ!《《遂に》》凛華、告ったんだって?」
「あ、うん」

 何となく居心地が悪くて目を逸らすと、美空はバチンと俺の背中を叩いた。

「いくら軽い琉生だって気づいてたでしょ?」
「でも、凛華だってずっと「好きじゃない方が気楽でいい」って」
「それは琉生がずっと「好きにならないなら遊ぼっ」って言うからでしょ!?」
「何だよ、それ……」

 俯くと、美空はため息を吐いて靴を履き替える。
 そうなら、凛華もどんな想いで今まで俺が色んな女の子と遊びに行ったり、抱き締めたり、キスするのを見ていたんだ?
 どんな気持ちであいつは俺と居てキスもしていたんだ?

「ねぇ、“楽しく遊ぶ”ってそれは否定しない。琉生と遊ぶのめちゃくちゃ楽しいもん!でもね」

 靴を履き終えた美空がクルッとこっちを見た。

「凛華の好きの気持ちは否定しないで。いつか琉生も恋したらきっとわかる。声だけでも聞きたくて、側に居たくなって、その目に映して欲しくなって、少しでも触れたくなるその気持ち」

 微笑む美空がめちゃくちゃ輝いて見える。
 そっか、美空も好きな奴居るって言ってたもんな。
 思いつつ、「じゃあ、本当に約束あるから!」と手を振って帰って行く美空を見送った。

 わかるよ、美空。俺もその気持ちもう知ってる。
 美空の言葉を反芻させて思い浮かぶのはやはり宮部の顔ばかり。
 でも、凛華に片想い中のあいつに同じ男である俺の気持ちなんて届かない。