嫌いなあいつが気になって

「村瀬くん」

 ハッと目を覚ますと、躊躇いがちな宮部が居て慌てて体を起こす。

「え?」

 教室を飛び出したのは昼休みが終わる頃だったが……辺りを見回して時計を見た俺は大きなため息を吐いた。
 またかなりサボってしまったらしい。

「澤部さん、心配していたよ?」

 いつものようにすぐに勉強を始める訳でもない宮部をただぼんやりと見つめる。だが、

「あ、もしかして……」

 思い当たったそれを口から出そうとした俺は何か息苦しさを感じてギュッと首元を押さえた。
 前も宮部から出てきた凛華の名前。
 いつも勉強ばかりで教室の様子なんて見ていないくせにやたら凛華のことは知っている気がする。
 あれ、宮部の好きな相手って……凛華?

「え?何?」

 俺が話し出さないことに少し驚いたような宮部が顔を覗き込んできて、反射的に体を反らす。

「何でもねぇよ……」

 言いつつ宮部の顔を見ることができなかった。
 こいつは好きな女が俺にキスをして、どう思ったんだろう?
 そんな思いが頭をよぎると宮部と目を合わせるのが怖くなった。
 凛華を好きな宮部。宮部を好きな俺。俺のことを好きな凛華……。
 笑えないその図式を頭の中で描いて再び机に突っ伏す。
 その時、スラックスのポケットに入れてあったスマホが着信を知らせた。
 かけてきたのはボーリングでもペアだった美空。

『あ、琉生ぃ?美空、今日は約束あるのに凛華に琉生のカバン預けられて困ってんだけどー。今、どこー?』
「マジで!?今、どこ?すぐ行くわっ!」

 俺は宮部と二人だけの空間に耐えられなくなって急いで図書室を飛び出した。