嫌いなあいつが気になって

「ねぇ、琉生。ちょっと」

 クラスで武野たちと笑っていた俺は凛華に呼ばれて顔を上げた。

「何ぃ?」
「だから、ちょっとこっち来て」

 聞いてみても凛華は少し真面目な顔で手招きをするだけ。

「妊娠させた?」

 武野の呟きを聞いてその後頭部を叩くと、凛華は何かを堪えるような顔をして詰め寄ってきて俺の胸元を掴んだ。

「ねぇ、琉生!今日おかしいよ!」

 悲痛なその顔。

「は?」

 思い当たらなくて首を傾げるが、凛華は唇を噛んで堪えつつもこっちを見た。

「色んな女の子と遊びたいから彼女は作らないんじゃなかったの!?」

 目尻に涙を滲ませて詰められて、深く吐いてしまいそうになる息を止める。

「うわっ、最低はつげーん!」

 武野はそれだけ言ったくせに、もう関わらないつもりのようで頬杖を付いて同じ野球部の奴らと話し出した。

「別に彼女を作ったつもりはないけど?」

 ゆっくり少しずつ息を吐いて、俺の開いて座っている脚の間に立つ凛華を見上げる。

「私は琉生が本命は作らないって言うから友達で居たんだよ!」
「……」

 嫌な予感しかしなくて考えるが、凛華を止められるものが見当たらない。

「琉生が誰かに取られるなら話は別!私は琉生が好き!」

 両頬を包まれて唇は触れないギリギリで告げられた告白をただ為す術もなく聞いていた。
 ピューピューと囃し立てて周りがざわついているのはわかるのに、何も耳に入って来ない。
 ただ、いつも教科書ばかり見ている宮部がこっちを振り返っているのが目に入って頭が真っ白になった。