あちこちお店を見て試着する先輩に俺も俺なりにコーディネートして、ショッピングも少しだけして……日も暮れてくるとアキちゃんはグッと伸びをした。

「ありがと!何かちょっとスッキリした!」

 その顔が少し晴れやかで嬉しい。

「うん!またいつでも呼んで!」

 笑って両手を広げてみると、先輩は笑いながら飛び込んできた。
 ギュッと抱き締めてそっと片手で頭を撫でる。

「大丈夫!失恋は次の素敵な出会いへの始まりだから!」
「何それ!」

 笑う先輩に微笑んでそこからは手を繋いで地下にある駅の改札まで見送った。



 バス乗り場へと向かうために階段を上った俺は見覚えのある後ろ姿を追いかける。

「宮部!お前なーにしてんのっ?」

 軽く肩を叩くと、宮部は握っていたリュックのショルダーストラップに更に力を込めた。

「んー?帰るとこ?」
「……いや、《《帰れない》》」

 苦しげなその顔はあの日に見たそれと同じ。
 
「はぁ?何かあんの?」

 思わず詰め寄ると、宮部はグッと唇を噛み締めた。

「やめとけ。切れるから。ったく……何かあるなら話せよ!」

 さっきまでのアキちゃんにはゆったり構えて話し出すのを待てたのに、なぜかこいつはうまく待ってやれない。
 すぐにでもその辛そうな顔を解してやりたくてそっとその頬に触れた。
 ビクッとして逃げようとする宮部の手首を掴むと俺は一旦深呼吸をする。

「わかんねぇけど……とりあえず逃げるなって。またファミレス行くなら……まぁ……俺ん家に来るか?」

 自分の言葉が耳に届いて内心驚きつつも真剣に宮部を見た。
 誰かを家に呼ぶなんて……俺は生まれて初めてだった。