日曜日は特に予定もないはずで、眠っていた俺はスマホの着信音で目を覚ます。

『ふふっ、もしかして、寝てた?』

 聞き覚えのあるような声だが、まだ寝起きの俺にははっきりと思い出せない。
 ディスプレイにある“アキ”の文字を見て色々な顔は思い浮かぶがピンとは来なかった。

『ショッピングでもカフェでも付き合ってくれるんでしょう?』

 それに気付いたのか、言われて体を起こしながら「あーぁっ!」とやっと一致した人物を頭に思い浮かべる。
 体育倉庫に来たあの先輩の艶やかな唇と白くて細い足。

「連絡ないから忘れてました!」

 ぶっちゃけて笑うと、先輩もくすくすと笑い出す。

『素直だなぁ。ねぇ、二時間後。キミたちがよく行ってるテラスのカフェなら……どう?』

 聞かれて即誘いに乗ることを決意した。
 女の子からの誘いは断らない。
 それは俺のポリシーだ。

「お付き合いしますよ!」

 ベッドから飛び出して俺はすぐに準備を始めた。
 初めて遊ぶ女の子なんてワクワクする。
 先輩のあの色気はちょっとドキドキもするけど、昼間のカフェだ。
 楽しみの方が大きい。

「琉生!朝ご飯は冷蔵……」
「俺、すぐ出かけるー!」

 部屋を出た瞬間に姉ちゃんにぶつかりかけて、言われた言葉にさっさとカブせた。
 そして、そのまま階段を駆け降りる。
 怒鳴り声を聞きながら顔を洗って、ヒゲを剃って、化粧水をつけてから髪をセットしていると、鏡の端に写った快生と目が合った。

「静華ちゃん、怒らせるなよ」
「姉ちゃんはお前が機嫌取っといて!じゃあなっ!」

 ポンポンとその肩を叩いて洗面所を飛び出す。
 部屋でピアスを着け替えて、お気に入りのネックレスを掛けるとサイフとスマホを捩じ込んで再び部屋を出た。