ほらな、一人なのは自分だろ?
 なぜか毎日あいつが誰とも話さずただ一人、教室の一番前で勉強している姿を見つめている。

「琉生ー?何見てんの?」

 俺の席に来た凛華に聞かれて、

「別にぃ?」

 笑いながらその腰に腕を回した。
 引き寄せて感じる柔らかさと女の子のいい匂い。
 やっぱりあいつとは違う……と思いつつも、最後のあの物悲しい声がまだ残っていて気付くとまたすぐに目に入れてしまった。
 淋しげな女の子は放っておけない。
 でも、男は別にどうでもいい。
 まして、あんなガリ勉野郎なんて。
 思うのに何でこんなにもあいつの声が消えないんだろう?

「ねぇ!琉生?聞いてる?」

 凛華に顔を覗き込まれてにっこりと笑う。

「もちろん聞いてる♡」

 ギュッとその細い腰を抱き締めると、凛華も笑って抱き着いてきた。

「最近、ちゃんと授業居るけどどーしたの?」
「まーた補充とか辛いし」

 泣き真似をすると、凛華は俺の頭を撫でてくる。

「いい心掛けだけど……うわの空で入ってないでしょ?」
「空?」

 窓の外を見つめると、凛華に爆笑された。

「うわぁ……次はバカ過ぎて補習じゃね?」

 武野に憐れんだ目を向けられてその肩に腕を回す。

「はぁー?何でだよ!」
「お前、赤点補習の常連だろ?」

 赤点と言われると言い返せなかった。

「なーぁ!そん時は一緒にやろ?」
「一人でやってろ!俺は部活だっつの!」

 武野がつれない。

「凛華ぁ♡」

 甘えてみると、

「ま、それはなった時に考えよ!」

 凛華はそっと抱き締めてくれた。