嫌いなあいつが気になって

 補充も終わった。
 ファミレスではあんなに話したのに、同じ教室に居てもクラスでの宮部はただ前を向いていて接点も何もない俺たちは関わることもなくなった。
 目も合わず、ほとんど声を聞くことさえない。
 何かちょっと打ち解けた気はしたんだが……それはあの不意に訪れた図書室という特殊な環境とその余韻が残ったまま二人でまたファミレスに居たというレアなケースだったからなのかもしれない。
 やっぱり今日もあいつは一人机に向かっていて、授業中でもないのに教科書を開いてペンを動かしている。
 ケタケタと笑って騒いでいるクラスの連中なんて居ないようなその姿はやはりどうしてもいけ好かなかった。
 むしろ、ファミレスで見た笑顔や意外とコーラが好きなこと……それは同じ顔をした別の人物だと言われた方が納得できる。
 だが、最後に聞いたあの消え入るような声が……なぜか耳に残ってしまっていてスッキリしなかった。

「琉生〜ぃ!今日はどーする〜?」

 クラスの女子、和奏(わかな)に聞かれて、宮部を視界から外した俺はそのプルンとした唇を見つめる。

「行きたいとこあんなら付き合うけど?」

 答えて微笑むと、その艶々の唇が満足気に引き上げられた。

「じゃあ、たまには違うカフェ行こうよ!旬のフルーツ使っためっちゃ美味しいパフェあるんだって!」

 そこに入ってきたのは凛華。

「それって駅裏の?」
「そう!見た目もかなり凄いらしいよ!」

 女子二人で盛り上がるのを見つめる。
 楽しそうに話していて微笑ましい。
 俺が誰とも付き合わないのはこの関係が平和で気楽だからだ。
 これに恋愛が絡んだら……あっという間に修羅場と化すだろう。