嫌いなあいつが気になって

「それって……要は……村瀬くんはこれまで人を好きになったことがない、ってこと?」

 またコクリと少し喉を潤して宮部がやっと口を開く。

「それもあるけど……一度しかない青春、思いっきり楽しみてぇじゃん?」

 俺もグラスを持ち上げてジュースを飲むと、宮部はじっとこっちを見ていた。

「何?」

 反論があるなら聞いてやろう、と挑むように聞いてやる。
 だが、そんな俺の煽りには乗らないのか、ただ通じていないのか、宮部はキリッとした顔を崩さない。

「それって楽しいの?」

 真剣に聞かれて笑ってしまう。

「は?」

 それでも宮部はただ真面目な顔でこっちを見てきた。

「騒いで、遊んで……その時、その場では楽しいかもしれないけど……寂しくない?」

 言われて今度は俺が黙り込む。

「誰も大事な人が居ないってことだろう?村瀬くんだって、結局僕と同じで一人なんじゃないの?」

 その目がとてつもなく寂しそうに見えて咄嗟に手を握った。
 ビクッと跳ねた宮部の手が遂にグラスを弾いてしまってコーラは零れ、グラスはテーブルから落ちて音をたてる。
 駆けつけた店員が拭いてくれている間も宮部は両手を握り締めて縮こまっていた。

「あれ……もしかして、俺の方が嫌われて……る?」

 呟くと、パッと顔を上げた宮部と目が合う。
 フルフルと首を横に振る姿はかなり必死で、でも、なぜか悲しそうに見えた。

「……」

 そんなの明るく吹き飛ばしてやりたいのに言葉が出てこない。
 注文した料理が運ばれてきてもうまく口の中で咀嚼できなかった。
 沈黙は苦手なのに、入れた肉を飲み込めない上に、話す話題も何一つ思いつかない。
 とりあえず、残りのジュースで流し込むと、ドリンクを取りに立ち上がろうとした俺のスマホが着信音を響かせた。

『琉生っ!もうどこ行ってるのよ!』

 通話を押した瞬間に耳をつんざくような大声。
 俺の六つ離れた姉、静華(しずか)はいつも容赦がない。