嫌いなあいつが気になって

 まっすぐ帰る気にもならずに学校を出てフラフラと歩く。
 バスに乗ればすぐに家だが、せっかく補充からも解放された金曜日の夜にそのまま帰るなんて何かもったいない気がした。
 とはいえ……スマホを出してメッセージアプリを開くが凛華も今日はバイトだし、他の女の子たちも塾だの、彼氏とデートだの……俺が補充で無理だと工藤に広められたせいでみんな予定はもう別にある。
 いざ冷静に見てみると誰も構ってくれなさそうで悲しい。

「……帰ろっかなぁ」

 寂しくなってきて呟いた俺は暗くなった空を見上げて孤独に打ちひしがれていたんだが……目に入った看板を見て足を止めた。
 店の中を窺ってみてニヤリとしてしまう。
 窓際に居た女の子の集団と目が合って笑われたが、軽く笑顔で手を振っておくと彼女たちも色めきながら手を振り返してくれた。
 それと同じ店内には見覚えのあるあいつ。
 こんなとこでもあいつは……。
 迷わず店に入って「あ、知り合い居るんでっ!」と近づいてきた店員に断って奥へと進む。

「やほっ!マジでここでも勉強してんじゃん!」

 キャーキャー声を抑えながら騒ぐ女の子には笑い掛けるだけにしておいて、顔も上げないそいつに声を掛けると、宮部は跳び上がってシャーペンを落とした。

「えーぇ。その反応、ひっどくね?」

 拾ってそのペンを差し出すと、宮部はそろりと手を伸ばす。
 あまりにもオドオドしたその反応が面白くてペンごとキュッと手を握ってやると、宮部はまた派手にペンを飛ばした。

「コントかよ」

 笑って向かいの席に座りながら今度はテーブルにペンを転がす。

「ご、ごめん」

 ビクビクするその姿は見ていてイタズラ心が刺激される気がした。

「えー?」

 宮部を見て首を傾げると、チラッとこっちを見た宮部がパッと顔を背ける。

「あ、あり……がとう」

 落ち着きなくメガネをしっかり上げる姿を俺はテーブルに頬杖を付いて眺めた。