嫌いなあいつが気になって

 言われた一週間の最終日。

「よし。これで補充も全部終わりだな」

 キュッと赤ペンに蓋をして腰を伸ばした工藤。

「だっるーぅ」
「誰のせいだ!誰のっ!これに懲りてもう授業はちゃんと受けろよっ!」

 脱力して机に突っ伏しながら右頬をくっつけると、プリントの束で工藤は容赦なく叩いてきた。

「だってぇ、タルいじゃん。授業」

 やれと言われてできるのならばこんなことにはなっていない。
 どうしたって意味もわからない授業は暇でしかなくて、その五十分間じっと席に座って真面目にノートなんて書いていられない。

「お前、教師を目の前にしてケンカ売ってんのか?」

 ピクッと吊り上がってヒクつくその眉。

「んー?くーちゃん♡かわいいお顔が台無しだぞっ!」

 またプリントを振り上げたのを見てにっこり笑うと、工藤は目を細めてバシバシと叩いてくる。

「かわいい生徒を叩くってどうなのー?」
「なら、お前もかわいらしくまともに授業受けろよ!態度を改めろ!」

 甘えた言い方をしてみても、工藤はブレない。

「えー?難しい言葉とかわかんなーいっ!!」
「Change attitude!!」

 ベェッと舌を出したのに、すぐに英語で被せられてげんなりする。

「マジになんないでよー!余計わかんないって!」

 笑いながら体を起こして止まらないそのプリントの束を掴むと、工藤はため息を吐いてプリントを俺に押し付けてきた。

「少しは宮部を見習え」

 言われて笑うと工藤はパソコンの電源を落として教科書を片付けながら窓の外を見つめる。

「学年一の優等生と学年一のどうしようもない不真面目で適当で救いようもない……」
「俺のこと何だと思ってんの?」

 憐れむような目を向けられて口を尖らせた。

「宮部の爪の垢を煎じて飲め」
「は?何て?」

 俺には理解できない言葉の数々にギブアップするしかない。

「……Take a……」
「あぁ、いいってもう!」

 机の上に出したままだった筆箱をリュックに雑に入れて伸びをする。
 放置したままのプリントに気づいた工藤がそれも俺のリュックに入れてきて、そっとため息を吐いた。