嫌いなあいつが気になって

「僕は勉強が好きって言うか……」
「何?」

 口ごもった宮部のその先が気になってじっとそっちを見つめると、宮部は慌てて正面を向いて両膝を握って更に背筋を縮こまらせた。
 こんなクソ真面目野郎とまともに会話しているとか笑える。
 このまま時間が潰せるならいいのかもしれない?なんて思っていたが、

「……勉強をしていれば……余計なことは考えなくて済むから……」

 消え入りそうなその声に眉をひそめる。

「はぁ?」

 益々理解ができない。

「え、気晴らし的な?勉強が?」

 聞き違いとしか思えないが、宮部ならあり得なくもない気もする。

「うーん……僕の場合は……ドツボにはまらないための対策……かな?」

 こっちは見ないで少し照れたように頬を掻く宮部を見て開いた口が塞がらなかった。

「勉強をしているとその美しさとか……単純に問題と向き合って思考をそこに集中させられるだろう?」

 こいつは何を言っているのか?

「……意味わかんね」

 素直に口にすると、宮部は少しだけ笑った。

「ふふ、想いを断ち切るのに丁度いいんだよ」

 その表情と切ないくらいの声音。

「え!?何!?お前でも、恋とかしてんの!?」

 理解不能で頭の中ごちゃごちゃになっていた俺の中をクリアにする言葉に思わず反応をして身を乗り出す。

「あ、いや、えっと……待って」
「うっそ!マジか!」

 顔を覗き込むと、慌てて避ける宮部の腕を掴んで隣のイスに移動した。
 顔を寄せると、耳まで真っ赤になった宮部が焦ったように空いている右腕でその顔を隠す。

「かわいい?いつからだよー?相手ってこの学校?」

 それでも近づくと、宮部はイヤイヤと首を横に振った。
 サラサラの髪が揺れてメガネがずり下がる。
 真っ黒なその目は少し潤んでいて、寄った眉にプルプル震えるその姿はちょっとかわいいと思ってドキッとした。

「……お前、メガネ外せば?」

 思わず呟くと、宮部は慌ててそのズレたメガネを直す。

「プ、プリント!!やらないといけないだろっ!!」

 俺の腕からワタワタと逃げ出して教科書で顔を隠した宮部は、今までのムカつくガリ勉のイメージとはちょっと違っていた。