嫌いなあいつが気になって

「ったく、お前には羞恥心とか常識とか理性はないのか!」

 放課後、今日も捕らえられて英語科準備室に連れてこられた俺はもうため息しか出ない。なのに、

「shame、common sense、reason!」
「日本語でもわかんねぇのに英語にすんなよ」

 無駄に……いや、教師としてはいいのかもしれないが発音のいい英語にげんなりする。

「お前の無駄な元気は奪っておかないと聞かないだろうが!」

 ため息を吐いてプリントを手にする工藤を見ながら、かったるくて机にダルんと伏せた。

「元気なくなったら勉強なんてやれねぇだろ。女の子のおっぱいないとやる気なんて出ねぇし。彼女居るならわかるだろ?くーちゃんだって……」
「黙れ!万年発情バカがっ!!」

 少し赤くなるのはかわいいと思う。

「ひっで〜ぇ!俺、童貞なのにー!」
「は?って、そんなんどうでもいいわ!やるぞ!」

 一瞬きょとんとした顔はちょっとよかったのに、工藤はすぐに切り替えて赤ペンを持った。
 バツだらけのプリントを丁寧に最初から解説されて、そのアルファベットを見ているだけで眠くなる。
 こんな一対一の状態であろうと、苦手なものは苦手過ぎて抗えない。すると、

「あれ?科会を始めますが……工藤先生はどうしますか?」

 不意にドアが開いて顔を出した中年の教師。
 その出現で一瞬現実に戻ってきたが、覚醒するには至らない。

「あー、忘れていましたっ!!ちょっとこの村瀬を図書室にでも置いてくるので……先に始めてもらってもいいですか?」

 慌てる工藤はちょっとおもしろい気がしたのに、聞こえてきた図書室なんて移動が面倒だ。
 用事があったのならこのまま終わりにすればいいのに……。

「じゃあ、開始を十五分後にしましょうか。準備だけしていますね」

 あくびをして机に伏せると、ドアを開けた教師は時計を見て入ってきた。

「すいません。ほら!村瀬!立てっ!!」

 立ち上がった工藤がその教師と話終えたらしく俺の右腕を引き上げる。
 まだちょっとぼーっとしているのにリュックを持たされて俺も立たされた。