(なんでこうなるんだよっ……!!)
2年生の教室に入るのは新鮮で嬉しかったけれど、僕の心はいつになく荒ぶっていた。
蓋を開けてみると、同じクラスになりたくなかった『威圧的陽キャ集団』の日枝、宇佐美、葉山は全員が1組になっていて――。
(いや、先生方もどうしてこれでいいと思ったんだよ……)
心の中でついツッコミを入れてしまう。
クラスの半分くらいはここ1年で家族よりも見慣れた顔だ。前のクラスでこれといって大きなトラブルがなかったからかもしれないが……それにしても、解せない。
特にこの3人組については、一緒のクラスにするメリットがまったく見当たらなかった。
明るく、容姿端麗で、背も高い。
そこまではべつにいいのだが、この3人に共通するのは『謎の威圧感がある』ということだ。
日枝奏汰はあの皮肉っぽく冷ややかな笑みで上から見下ろしてくる感じがあるし、見た目もチャラそうでちょっとしたヤンキー感がある。
宇佐美渉はそこに意見や主張の強さを足した感じで、葉山北斗はチャラくはないが常に不機嫌そうな感じがあった。
(関わんなきゃいいだけの話なんだけど、やりにくいんだよな……)
学級委員長という立場上、去年の文化祭のことは特によく憶えている。
みんなで時間をかけて話し合い、ようやく出し物の詳細が決まりかけたときのことだ。
宇佐美が、考えうる最悪のタイミングで「でも、やっぱりこっちの方が良いんじゃね!?」というちゃぶ台返し的な攻撃を繰り出してきたのだ。
その攻撃力があまりに高かったため、みんなの方が「そ、そうかもね……?」と妙な雰囲気になってしまい、結果的に話し合いが2時間も長引くことになった。
べつに、意見を強く主張されることが嫌いというわけじゃない。けれど、タイミングが悪いとこう……僕の才能とも言える短気な性格が「こんにちは」と顔を出してきてしまう。
中学時代は控えめに言ってヤンキー、正確に言うと非行少年だった僕だ。
もう思い出したくもないような色んなことがあって……「こんなことはやめよう」と固く心に誓った。中学時代の自分を知る人がいない地域の学校を選び、こうして片道2時間もかけてこの高校に通っている。
『周りに迷惑をかけず、しっかりと勉強をして、誰かの役に立つ』。
そんな人になりたかったし、なろうと思っていた。
優等生を演じるのは窮屈で息が詰まることもあるけれど、高校最初の1年間を必死に頑張ってきたのだ。このくらいで挫けるわけにはいかなかった。
(それに、学級委員はやらなくてもいいわけだしな……)
去年の秋に生徒会の書記に当選して、任期もまだ半年ほど残っている。周りに貢献するといっても、色んなやり方があった。
(大丈夫、大丈夫……)
僕は自分に言い聞かせるよう、心の中で繰り返した。
類は友を呼びかねない。
だからこそ、僕は派手な奴らには関わらず、品行方正な仲間たちと1年を真面目に何事もなく過ごしていくのだ。
始業式前の騒がしい教室。
僕は決意を新たにすると、自分の席で姿勢を正した。そして宇佐美の席に集まる3人組を視界に入れないよう気をつけながら、いつも鏡代わりにしているスマホで身だしなみを整えた。
2年生の教室に入るのは新鮮で嬉しかったけれど、僕の心はいつになく荒ぶっていた。
蓋を開けてみると、同じクラスになりたくなかった『威圧的陽キャ集団』の日枝、宇佐美、葉山は全員が1組になっていて――。
(いや、先生方もどうしてこれでいいと思ったんだよ……)
心の中でついツッコミを入れてしまう。
クラスの半分くらいはここ1年で家族よりも見慣れた顔だ。前のクラスでこれといって大きなトラブルがなかったからかもしれないが……それにしても、解せない。
特にこの3人組については、一緒のクラスにするメリットがまったく見当たらなかった。
明るく、容姿端麗で、背も高い。
そこまではべつにいいのだが、この3人に共通するのは『謎の威圧感がある』ということだ。
日枝奏汰はあの皮肉っぽく冷ややかな笑みで上から見下ろしてくる感じがあるし、見た目もチャラそうでちょっとしたヤンキー感がある。
宇佐美渉はそこに意見や主張の強さを足した感じで、葉山北斗はチャラくはないが常に不機嫌そうな感じがあった。
(関わんなきゃいいだけの話なんだけど、やりにくいんだよな……)
学級委員長という立場上、去年の文化祭のことは特によく憶えている。
みんなで時間をかけて話し合い、ようやく出し物の詳細が決まりかけたときのことだ。
宇佐美が、考えうる最悪のタイミングで「でも、やっぱりこっちの方が良いんじゃね!?」というちゃぶ台返し的な攻撃を繰り出してきたのだ。
その攻撃力があまりに高かったため、みんなの方が「そ、そうかもね……?」と妙な雰囲気になってしまい、結果的に話し合いが2時間も長引くことになった。
べつに、意見を強く主張されることが嫌いというわけじゃない。けれど、タイミングが悪いとこう……僕の才能とも言える短気な性格が「こんにちは」と顔を出してきてしまう。
中学時代は控えめに言ってヤンキー、正確に言うと非行少年だった僕だ。
もう思い出したくもないような色んなことがあって……「こんなことはやめよう」と固く心に誓った。中学時代の自分を知る人がいない地域の学校を選び、こうして片道2時間もかけてこの高校に通っている。
『周りに迷惑をかけず、しっかりと勉強をして、誰かの役に立つ』。
そんな人になりたかったし、なろうと思っていた。
優等生を演じるのは窮屈で息が詰まることもあるけれど、高校最初の1年間を必死に頑張ってきたのだ。このくらいで挫けるわけにはいかなかった。
(それに、学級委員はやらなくてもいいわけだしな……)
去年の秋に生徒会の書記に当選して、任期もまだ半年ほど残っている。周りに貢献するといっても、色んなやり方があった。
(大丈夫、大丈夫……)
僕は自分に言い聞かせるよう、心の中で繰り返した。
類は友を呼びかねない。
だからこそ、僕は派手な奴らには関わらず、品行方正な仲間たちと1年を真面目に何事もなく過ごしていくのだ。
始業式前の騒がしい教室。
僕は決意を新たにすると、自分の席で姿勢を正した。そして宇佐美の席に集まる3人組を視界に入れないよう気をつけながら、いつも鏡代わりにしているスマホで身だしなみを整えた。


