だから、私はニールの言い訳なんて、聞きたくもなかった。

 その女性を愛しているのならば、浮気なんてするはずもない。私は幼い頃から、そう思って生きて来たのだから。

 ……ああ。会場で配られていたお酒を、もっともっと飲めば良かったかもしれない。

 婚約者に裏切られたのよ。とても正気でなんて居られない。

 ニールのことを、好きだった。

 ……確かに、好きだったけど、結婚前に浮気する男なんかと結婚したくない。

 これは、私の嘘偽りのない気持ちだった。

 もう一度求婚者を探したりという面倒はあったとしても、これだけは絶対に引き下がりたくない。

 私は……一度でも浮気した人となんて、結婚したり、しない。

 これは、ニールにも婚約する前に宣言したことだ。

 引き下がらない……絶対によ。

 不意にひゅうと吹いた夜風を受けて、塀の隙間から見下ろせば、そこには痴話喧嘩をしているように言い合う男女が二人。

 男性側がどうにか手を引いても、女性はなにやら違う方向に行きたがっているようだ。