私のお父様オルセン男爵は、女癖の悪い放蕩者として知られ、お母様はいつも泣いていた。

 だから、そんな両親を持つ私も、配偶者選びには異常に慎重になってしまっていた。

 少しでも悪い部分が見えてしまうと、どうしても我慢出来ずに誘いを断ってしまうからだ。

 こうして出会った時には、王子様のように素敵に見えたニールだって、きっと、そうなるかもしれないと恐れていた……けれど、婚約するまでそうならなかった。


――――だから、私は間違えてしまった。



◇◆◇


「はーあ……男なんて……男なんて、皆同じよ。皆お父様と同じような、クズ男ばかり……守れない約束ならば、最初からしなければ良いのに」

 ひとしきり泣いた後に、私は投げやりな気分になっていた。

 私は女癖の悪い、クズなお父様を見て育った。

 お父様の浮気をした言い訳は、立派なものだ。お酒に負けてしまった、つい魔が差してしまった、確かに一夜は過ごしたが、愛しているのはお前だけだ。

 嘘ばっかり……もし、お母様を心から愛しているのならば、浮気なんて絶対にしないはずよ。