ベネディクトは私に視線を向けたので、慌てて挨拶をした。

 彼は初老で白髪の紳士で、今はゆったりとくつろいだ服を着ていたので、見た目で神官であるとはわからない。

「私はベネディクト・マートン。勇者クロードにこき使われている神官ですよ。一番大変な仕事を任せてしまったので、逆らえなくてね……どれ。痛めた足を見せてくれますか」

「はい……」

 おそるおそる右足を差し出せば、彼は大きな手をくるぶしに押し当てた。ふわっと白い光が放たれて、痛みが驚くほどになくなった。

「どうですか。まだ痛みますか?」

「いっ……いえ。ありがと……え!」

 足の痛みを取り払ってくれたベネディクトにお礼を言おうと思えば、姿を消してしまった。

「どう? ベネディクトの治療」

「クロード! こんなに勝手に呼びだしておいて、こんな風に返すなんて……信じられない。お礼も言えなかったのよ!」

「俺が今度代わりに伝えるよ。それに、ベネディクトは俺の横暴に慣れているから」

 なんでもないことのようにクロードはそう言い、私は言葉を失ってしまった。