仕事から帰り、狭い部屋の中で二人過ごして居るけれど、私たち二人はどこか不自然なままだった。

 ……理由は、わかっている。私がクロードのことを、意識し過ぎてしまっているだけ。私がぎくしゃくしているので、彼も通常状態でいられる訳もなく……。

 クロードは窓辺に座って何か考え事でもしているのか、憂い顔で街の灯りを見つめていた。

 黙ったままでそうしていると、やけに魅力的に見える。クロードは私のことについては執着し過ぎているとは思うけれど、それ以外は完璧と言える男性だもの。

 ……どうしてそこまで、クロードは私なんだろう。私以外好きにならないでと、幼い頃に約束させたから?

 どうして……。

「いた……」

 椅子から立ち上がろうとした私は、足場台から落ちてしまった時に、右足をくじいてしまったらしく顔をしかめた。

 最初は痛みもそれほどでもなく大丈夫だろうとは思って居たんだけど、違和感は増して今では足を一歩でも踏み出すと痛みが走った。

「……シュゼット。大丈夫? 足をくじいたのか?」

 クロードは心配そうな声を出し、私は苦笑いして頷いた。

 もし、あの時に彼が助けてくれなかったら、足の怪我はこんなものでは済まなかったもの。

「そうなの。けど、クロードが助けてくれたから、大丈夫……私もぼーっとしていたから。明日は休みだから医者に行くことにするわ」

 治療費は高くなってしまうけれど、足が使えないと仕事自体が出来ないのだから、死活問題で必要経費でそれは仕方ない。

「医者なんて要らないよ」

「わ!」

「……え!」

 クロードが何気なく手を動かせば、ナイフとフォークを持った中年男性がその場に現れた。私も彼も声をあげて呆然としていて、落ち着いているのはクロードだけだ。

 だ、誰?