蜘蛛の糸を払うことに夢中になっていた私は、不意に足を前に動かしてしまいぐらりと身体が傾いだ。

 けれど、安全装置として腰には紐が巻いてあったので、大丈夫……な、はずだった!

 無情にも紐と足場台を繋いでいた金具が外れ、私はこのまま落下する! と目を閉じた。

「……シュゼット。大丈夫?」

 そこに私の身体を抱き止めてくれていたのは、真剣な表情を浮かべたクロードだった。

 わ……助かった。同じ邸の中で働いているものね……偶然私の近くにクロードが居てくれて助かった。

「あ……クロード。ありがとう……助けてくれて」

 もし、彼が居なかったら、私はそこそこの高さから無防備に落ちてしまうところだった。

 どうなっていたかを思えば、背筋がゾッとしてしまう。

「いや……あれは、金具が老朽化していたんだよ。執事にすぐに言って、新品に買い換えて貰った方が良い」

 クロードは真面目な顔でそう言い、抱き止めてくれた私を真っ直ぐ立たせた。そして、足場台を畳んで片付けようとしたので、すぐにどこかに行ってしまいそうだった。

「クロード! その、どうして、ここにいたの?」