本当に……あの人って、一体誰なのかしら。

 私は高い足場台を使って、手には小さな箒を持ち、玄関ホールに飾られたシャンデリアの蜘蛛の巣を払っていた。

 最初は高い場所が苦手でおそるおそる作業していたものだけど、シャンデリアの清掃は掃除メイドの仕事だし、何度も何度もこなしたら段々と慣れて来た。

 別に怖くないという訳ではなくお金が潤沢にある邸のものなので、落ちないように安全装置はちゃんと付いているし、気を付けて作業すれば落ちることはないし安全だと気が付いたからだ。

 それに、私だってそこまで、運動神経が悪い訳ではない。

 昨夜見た光景が、目に焼き付いて離れない。とても綺麗な女性だった。すっかり大人っぽく成長したクロードの隣に居たら、よく似合いそう。

 それに、よくよく考えてみると『偶然見掛けたんだけど、あの時に一緒に居た女性って誰なの?』と聞くことが、別に私たちの関係を決めなければならないことのようには思えない。

 ……けど、どうしても私は彼を意識しすぎて、聞けなかった。

 私は、クロードのことが好き……なのよね。そうよ。初恋の人だからという話では終われない。でなければ、こんなに気になるなんて、あり得ないもの。

 無心になりパタパタと箒を動かして、私は蜘蛛の巣を払った。

 シャンデリアに飾られた硝子がちょうど良い距離感なのか、蜘蛛の巣が張ってしまうことは避けられない。

 定期的に掃除するしかないのだけど、蜘蛛の糸が粘着質なのでなかなか取れないのだ。

 布で綺麗に拭ければ良いのかもしれないけれど、遠目で見ればわからないので、こうして蜘蛛の糸を払うだけで良いことになっている。

 ……あの綺麗な女の人は、もしかしてクロードのことが……好きなのかしら……。

「っ……わっ」