あんな良くわからない放送があるくらいなのだから、もしかしたら、呼びだした側にもなんらかの根拠があるのではないかと思うわよね。

 ……世界の何処かには勇者は存在しているだろうけれど、こんなにピンポイントに現れるなんて思えないもの。

 そうであって欲しい……どうか、現れて。

 ……だって、もしここで、空飛ぶ魔物に対抗出来るような勇者が居なかったとするでしょう。

 今にも迫り来る鳥型の大型魔物に、飛空挺は墜落させられてしまう。

 ここに乗っている私たちは全員、近い未来、死んでしまうことになるのよ……良くわからない呼び出しに期待を繋ぐしか、なかった。

 どうか、どうか、勇者様。もし居るなら、名乗り出て……と、私も胸の前で両手を組んで心から願った。

「……はい」

 緊張感に包まれたロビー中央、どこかから歩いてきた背の高い男性が、やる気のない声で返事をして軽く片手を挙げていた。

 私は彼の姿を見て、とても驚いた。

 勇者様、居たんだー! と、心の中で大きく叫んでしまうと同時に、今自分が目にしている光景がとても信じられない思いだった。

 この流れで世界を救った勇者が名乗り出てきてくれるなんて、にわかには信じられなかったし、彼が同じ飛空挺に一緒に乗っていたんだという事実も、本当に衝撃でしかなかった。

 そう。ここで何が一番に驚いたかと言うと、私には……名乗り出た勇者の顔に、とても見覚えがあったということ。