「……ギャビン。いきなり現れるのはやめろって、この前にも言っただろう?」

「失礼。僕は普通にこの部屋へ来ただけのつもりだったんですけどね。今度からはどこかを叩いて音を立ててから部屋の様子をうかがうようにしますよ」

 ギャビンも私の驚きように驚いたのか、胸に両手を当ててほーっと息を吐いた。

「床や壁をすり抜けるのを止めて、窓から入れよ。そうすれば、お前が入って来ることだってわかりやすいから」

「いえ。それは出来ませんね。僕は誇り高い翼猫ですよ? 移動手段に口を出さないでください」

 呆れたようにすり抜ける抗議を口にしたクロードに、ギャビンは身体をくるんと宙に回して意見した。

「だからなんだよ。それに……何の用だ?」

「昨夜にも、させていただいた話ですよ。クロード。昔から、人助けは自分のためと申しましてね……世界救済出来る程度に能力の高い君には、これからも色々とやってもらわないといけないことがあるんですよ」

「俺は勇者の役目は果たしたし、あとは知らない。自由にやってくれ……魔王を倒し世界を救わせておいて、人助けをした方が俺のためになるなんて、二度と言われたくはないな」

「クロード。どうしても? ですか」

「どうしてもだ。ギャビン。俺は勇者としての役目を果たした。それゆえに能力を与えられたことについては事実だが、それはもう自分以外、誰にも使い道を指定させない。俺にはこれからやりたいことがあるんだ。わかったな?」

 静かに圧を掛けるようにクロードは話し、そんな彼の言葉に押されるようにギャビンは何度か頷いた。