朝日に照らされて艶めく黒髪に、透き通る青い瞳。整った造形を持つクロードはいつ見ても変わりなく美男で、私ははーっと大きく息をついて首を横に振った。

 昨夜から、彼女が誰かということをすんなり聞くことも出来ずに、私は変な態度をとり続けるしか出来なかった。

「……いいえ。なんでもないわ」

 ちぎったパンを口に放り込みながらそう言った私に、クロードはどうして不機嫌なのかわからずに戸惑っているようだった。

 どうしても気になってまう。あの女性は一体、誰なの……?

 話掛けられた時のクロードの対応からして、知り合いだったわ。

 だって、クロードはこれまでにリベルカ王国居た訳でしょう。ここはノディウ王国。隣国とは言っても一国間の距離は長い。

 普通に王都と王都を行き来すれば、二ヶ月掛かる道のり。

 それを……あの女性はものともせずに、クロードを追い掛けて来たことになるのよ。

「あのっ……」

「ん?」

 あの女性は誰でどういう関係なの? 私のことがずっと好きって、言っていたよね?

 彼に聞きたい疑問が言い掛けて言えなくて、私の口は開いては閉じてを繰り返した。