『ーーーーーお呼び出しを申し上げます。この中に、世界を救った勇者様はいらっしゃいませんか? いらっしゃいましたら、至急、名乗り出てくださいますよう、お願い申し上げますーーー繰り返しますーーー』

 何……え? 勇者様? あ。確か一年前に世界を救ったって言う、あの?

 新聞で確か話題になっていたけれど、あまり興味が無かったから、どんな人物であるかは詳しく知らない。

 ローレンス侯爵邸で共に働くメイドたちが、写真を見て勇者様が格好良いと騒いでいたけれど、私は興味が湧かなくてどんな人かも確認していない。

 そもそも、一介のメイドが会えるような人ではないからどんな人でも関係なかった。

 そんな人が……この飛空挺に、乗船しているというの?

 こんな呼び出しでなんて、まさか、名乗り出て来る訳がないわよね……?

 その後、私が耳を疑う放送内容は、三回ほど繰り返された。

 ロビーに居た多数の乗客はキョロキョロと周囲を見渡し、誰かが名乗り出て来るのかという期待感で満ちあふれていた。