そうだわ。これをやるためにここまで来たのに、ドレイクのせいで忘れてしまっていた。

 そろそろ洗剤で汚れも溶け始めたから、手で揉んで綺麗にしたら、水気を切るために絞って干す準備をしなければ。

「ええ。そうよ。この洗濯紐に干せば、今日の仕事は終わりよ」

 私は洗濯物を干す用に、壁と壁の間に設置された何本かの紐を指さした。時間も遅く日は照っていないけれど気持ちの良い風が吹いているので、明日の朝には乾いているはずだ。

「では、俺が代わりに洗うよ。シュゼットは……はい、これを塗って」

「え? これって、何?」

 彼がどこからか取り出し差し出した小さな箱を開けば、中身は白い軟膏が入っていた。

「手荒れに効くクリーム」

 私は彼の言葉を聞いて、息をのんだ。

 クロード。もしかして、前に手荒れをしていた私の手を、見ていたから……買いに行ってくれたの?

「……いつこれを、買って来たの?」

 だって、これまでに一人で買いものに行く隙なんてなかったはずなのにと驚けば、クロードは軽く肩を竦めた。