「おい。少し優しくすればつけあがりやがって。俺が言い寄ってやっているんだから、抵抗せずに大人しく従えよ」

 ドレイクは私の手首を掴むと、ぎゅっと握った。

「っ……嫌! 痛い。止めてよ!」

 その瞬間、ドレイクの身体は吹っ飛んだ。

 そうとしか、言いようがない。だって、さっきまで私の腕を掴んでいたはずなのに、今は裏庭の向こう側までドレイクの身体は移動していた。

「シュゼット」

 いつの間にかすぐそこに居たのは、黒髪を上げて白いシャツを腕まくりしたクロードだった。陰り始めた赤い夕日の中に彼の姿があり、やけに良く見えてしまい思わず息をのんだ。

「クロード!」

「なんだよ! ……お前。一体、誰なんだ。俺のことを誰だと思って……」

 いきり立ったドレイクは泥まみれになって立ち上がり、寄り添った私とクロードを見比べていた。そして、クロードが自分をじっと睨みつけていることに気が付き、目を見開いて固まって居た。

「おい。そこのお前……これから、シュゼットに近付くな。嫌がられていると、わからないのか。次に彼女に近付けば、わかっているよな?」