けれど、そちらの期待なんて知ったことかと言わんばかりに、危険な黒い影は迷いなく真っ直ぐと飛空挺へと近づいてくる。

 つまり、飛空挺は狙われているのだと、私たちは次第に理解することが出来た。

 ……え?

 嘘でしょう。まるで物語の中のように、現実感がなかった。

 けれど、これって……とてもまずい事態なのでは?

 だって!

 この飛空挺には、どこにも逃げ道なんてないのよ。

 緊急救命艇はあるはずだけど、あの速度であれば逃げる時間なんてあるはずない。乗り込んでいるうちに、すぐに魔物がやって来てしまうだろう。

 魔物に攻撃を受けて、飛空挺ごと落とされる……さっきまで優雅に空の旅を楽しんでいたというのに、これはとんでもないことになってしまった。

 砲撃などものともせずに迫って来る大型魔物に強い不安を感じたのは、当然だけれど、私一人だけではなかったらしい。

 そこら中から、恐怖を感じて高い悲鳴が巻き起こり、辺りは騒然とした。


――――その時、だった。


 ピンポンパンポンという間抜けな音の後に、とある人物へ向けて呼び出しがあった。