最初は、目をこらして見えたあの黒い点は何なのかしらと不思議だった。

 もしかしたら、昨夜遅くまで本を読んでいたから、私の目が疲れているせいかもしれないとも思った。

 ……けれど、それはすぐに間違いであるとわかった。

 黒い点と飛空挺。

 お互いにとても速い速度で近寄っているのか、どんどん黒い点は大きくなり、黒い点だったものの全体像が見えて来た。

 大きな翼を持つ、鳥の魔物。近付く巨体は、ともすればこの飛空挺と同じ大きさがあるのかもしれない。

 私がそれを魔物だと認識し、息をのんだ瞬間。

 飛空挺の中には甲高い警戒音が何度も響き渡り、呆然としている人々は、現在自分たちの身に何が起こっているのか、いまいち理解が出来ていないようだ。

 彼らと縁遠い生活をしていた私だって、空を飛ぶ魔物は居ることを知っている。これまでにも飛空挺に乗っている時に、遠目で飛行する魔物が見えたことはあった。

 けれど、こんなにも飛空挺を狙って来るかのような、攻撃性の高い魔物に遭遇したことなんてなかった。おそらくは魔物だとしても、こんな上空で戦闘したくはないからだと思う。

 飛空艇側も魔物へ向けて威嚇のために、何度か大砲を発射した。

 私は手を組んで白い煙の向こうへ、魔物が去って行くことを祈った。