今日は不意に目が覚めてしまっていたけれど、ぐっすり眠っているところを起こされるなんて絶対嫌。

『けど、こうして起きているじゃないか。良かったら酒場に出てこないか。近くなんだ』

 がやがやとうるさい周囲の音を聞けば、彼は酒場で飲んでいるようだった。

 ……また、酔っ払って私を呼び出そうとしたのね。

「それは……」

 私が手にしていた通信機は、次の瞬間、クロードの右手の中で壊れていた。

「クロード!」

「誰」

「もうっ……これ高価なのよ。しかも、仕事で使うもので……」

 壊れてしまった通信機を手に弁償しないといけないと青ざめた私の前で、威圧的な空気を醸し出すクロードはもう一度同じ言葉を重ねた。

「誰」

 ああ……もう……いえ。これは、ドレイクが悪いわよね。

 だって、私たちもう別れているんだから、夜中に酔って連絡するなんておかしいのよ。

「今さっき通信をして来た人はドレイク……ローレンス侯爵邸での使用人の先輩で付き合ってすぐに浮気して別れたの。今では何もなくて、ただの仕事仲間よ」