玄関先で立ち止まり話をしている場合でもないので、扉を開けて私は先に部屋の奥へと進み、大きな張り出し窓を開けた。

 新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込んで、吐いた。

「はー……っ!! 久しぶりの我が家だわ! 手紙を渡して返事を持って帰るだけだけれど、ずっと移動中なのは疲れてしまうもの」

「うん。お疲れ様。シュゼット」

 クロードは室内を見回して、肩に掛けていた小さな鞄を置いた。

 旅をしているはずのクロードの荷物があまりに少なすぎると私が言ったら、空間収納魔法を使えるから、財布やその日使うもの以外は宿屋の部屋などで出し入れしているらしい。

 ……まあ、財布もその気になったら持たなくて良いんだろうけれど、何もない場所から財布を取り出している男性を見れば、私だって焦ってしまうものね。

 別に疑ったことなんてないけれど、本当にクロードは勇者様なんだわ。

「クロード。ご飯はどうする……? 外で食べても良いし、良かったら、軽く作っても良いわよ」

「ああ……シュゼットは着替えるだろうし、俺が何か、すぐに食べられる物を買ってくるよ。長旅の後だし、楽な格好をして」