……ということにしている。本当は、預けられた先の叔父様も叔母様も良い人だったけれど、本当の家出理由は言いたくなかったから。

「そうか……それでは、住みづらかったんだね」

「ええ……」

 亡くなってしまった彼らに罪を着せるようで胸が痛むけれど……家出の理由は言いたくない。誰にも。

「それで、シュゼットが家出したという目的からして、タルエイには住まずに、すぐに違う街に出たんだろうと思った。親戚の家や君のご両親のところに行って、家出したシュゼットを探していたけれど、君は見つからなかった……」

「ええ……すぐに、リベルカ王国を出たの。もう家には戻らないと決意していたから」

 今思い出してみると、あの時の私の覚悟は、相当なものだった。長距離馬車に飛び乗った。今ならば躊躇するだろうことも、平気でしていたと思う。

 何も知らずに、無鉄砲だったのだ。今ならばそれがどれだけ危険なことだったのか、身にしみてわかってしまった。