飛空艇から降りて、私の部屋に戻るために馬車を使った。

 貴族用のドレスを着用しているのだから、このままで往来を歩くなんておかしい。こういう時に馬車はいつも乗っているのだけれど、いつもと違うのは、隣の席にクロードが居ること。

「……部屋があまりにもみすぼらしくて、驚かないでね」

「それ……ここ二年くらいほぼ野営をしてた俺に言っても響かない、無駄な言葉だから……シュゼットの部屋は屋根あるだけ良いと思うよ。本当」

「冒険中は、野営が多かった……ということ?」

 勇者パーティーの冒険譚は、おそらく国民全員好きだろう。

 確かに数多くの魔物を倒して進んで行く訳だから、そういう人が住んで居ない場所に居心地の良い宿屋なんて都合良く用意されていない。

「うん。そうそう。この前に会っただろう? 翼猫ギャビン、あいつが案内人だから、あいつが連れて行く決められた道順をたどっていく……街のど真ん中に、魔物や魔王が居る訳ないしさ」

「そうなのね……大変だったわね」

 私もお金を稼ぐため自活出来るようになるまで、何も知らない状態から自分は頑張ったとは胸を張れる。

 けれど、クロードはそんな時魔王を倒すために、勇者として魔物退治なんかをこなしていたことになる。

 私はメイドとして掃除をしていた時に、彼はあの飛空挺で倒したような大型魔物と戦っていたのだ。

 世界を守るために。

「いや、楽しいこともたくさんあったよ。世界で一番の魔物使いと気があって仲良くなったり……それまでに見たこともないような美しい景色が見られたりさ。役目をこなすまで拘束されていたことが、本当に嫌だったけど、シュゼットは無事だったし今はまあ……それは、もう良いかなと思っている」

「……クロード」

 そういえば、クロードは私を探して居てくれたんだった。

「シュゼット。君が預けられた親戚が住んでいる街タエルイだけど、魔物に攻撃された滅んだことは知っている?」