何故かというと私には今こなしているような特別任務のことがあるので、掃除メイドとしてローレンス侯爵邸に務めている日以外は、別の仕事をしていることになっているのだ。

 だから、住まいも別に借りておいた方が良いだろうと、雇い主であるローランス侯爵の口利きで借りてくれていたのだ。

 金払いの良いローレンス侯爵の邸は実は人気の職場で、私のように邸外で暮らしている使用人も多く居るので目立たない。

 お金を貯めたいので家賃を払いたくないという使用人は、邸内にある何人かで共有する使用人部屋を使っているようだ。

 けれど、賃金は良いとは言え使用人の住めるような家賃で借りられる部屋が、誰かに見せたいと思うような部屋であるかというと、それは違っていた。

「自分のお金で借りた、シュゼットの大事なお城だろう? 別に卑下する必要なんてないよ」

「……後悔しても……知らないわよ」

 意味ありげに微笑んだクロードは、掃除メイドとしてなんとかお金を稼ぐ今の私と、いかにも世間知らずの貴族令嬢だったあの頃の私を同一視しているのかもしれない。

 そんなことがある訳はない。