身分差なんてわからなかった。今では思う。あの初恋はそのままいけば、叶わなかったのだと。

 だが、ずっとずっと、続くと思って居た……いつも傍に居るはずのシュゼットが、いきなり居なくなってしまうなんて思いもしなかった。

 シュゼットが別れも告げず、居なくなってしまうまで。


◇◆◇


「さっき……シュゼットは仕事だと行ったけど、偽名を使って飛空艇で何かを運ぶの? それって、俺からすると、何だか危ない仕事のような気がするんだけど……」

「……大丈夫よ! 何度もこなした仕事だし、これまで何の問題だって、起きたことはないわ。今私が使用人として働いている邸の主人から受けた仕事で、特別報酬だってちゃんと出るんだから」

「特別報酬上乗せでって……やっぱり、危なくない?」

 ようやく探し続けたシュゼットに会えたと思ったら、彼女は自分でも知らないうちに大分危険な橋を渡っていたようだ。

 真っ直ぐに人を信じ騙されやすい、育ちの良さ。それでいて、素直で人に対し誠実だ。

 俺が『それは、危ない仕事だ』と指摘しても、助けてくれた恩人を疑うことなど出来ないと頑な態度を取る。