クロードが何故か嬉しそうに言ったので、私は不意に痛みを感じた胸に両手を当てて首を横に振った。

「私はもう、貴族令嬢ではないもの……ただの平民よ。皆と一緒だわ」

「……何を言っているの。シュゼットは、他とは違うよ。全然違う。特別な女の子だ」

 再会したクロードはやけに、私を特別視する。

 私が昔、彼にさせてしまったあの約束のせいだと思うけれど。

 これだって、ただの事実……私はもう、貴族ではない。

 お金がなくなり家が没落してしまって、何も持っていない平民の一人。

「同じよ。今はあの頃に持っていたものを、何も持っていないわ。貴族の身分も……何もかも」

 私が顔を上げた、その時の……クロードの表情。

 これまで彼は何を言っても余裕綽々な顔をしていたはずなのに、やけに悲しそうに見えた。

 何なのかしら……どうして、そんなに悲しそうなの。

 私がここでこうして居ることは、クロードのせいでも、なんでもないのに……。


◇◆◇


 翌日、私は体調を崩してしまって寝込んでしまった。

 クロードと再会した昨日には、あまりにも色々なことがあったせいかもれない。