「私の雇い主と届け先が、懇意なのだと思うわ。別に宛名を書かなくても良いくらい親しいってことではない?」

「……なんだか、危ない仕事ではないって、自分に言い聞かせているみたいに思えるよ。シュゼット」

「なんですって?」

 私がクロードに言い返そうとしたその時、何かが部屋の中へと飛び込んで来た!

「えっ……!? え? え!!」

 私は驚いた。驚いたとしか言いようがなかった。

 船室内には背中に翼を持つ猫が確かに居るのだけど、上空を飛ぶ飛空挺の船室には窓を開くことなんて出来る訳がないし壁には穴は空いてない。

 けれど、綺麗な羽根を持つ薄紫の猫がそこに居るのは事実だった。

 魔物……ではないわよね?

 ……いいえ。もしかしたら、噂に聞く……魔力を持ち知能の高い獣、魔獣なのかしら。

「良いですか? クロード、落ち着いてください!」

「いや……お前がな。ギャビン。俺に何か用か?」

 猫は流暢に人語を喋り、立ったままで驚いた様子など見せないクロードの目の前で何かを訴えていた。