「俺たち、もうすぐ結婚するんだよ。もしかして……シュゼット。覚えてないの?」

 私たち二人はじっと見つめ合い、また微妙な間が空いた。私の記憶の中では、クロードに結婚して欲しいなんて言われていない気がする。

 いいえ。だって、私たちは幼い頃に別れているのよ。

「……覚えていないって、どう言うこと?」

「『私以外、絶対に好きにならないで』って、俺に約束させた……もしかして、忘れているの? 俺は勇者になった後だった」

「えっ。そんな……言ったような、気もする……けど、でも」

 私はあの時、可愛いクロードを自分だけしか持てない特別な宝物のように思っていた。

 だから、そういう子どもっぽい独占欲の強いことも、言ってしまったかも知れない。

 なにせ、何もわからない世間知らずな女の子だったから。今は違うわ。

「勇者になってしまえば、実は守護精霊が居て、それのせいで、嘘がつけないんだ。だから、ずっと……俺は、その約束を守ってる」

「……え?」

 嘘がつけない……? 勇者だから守護精霊が居て、特殊体質になった?

「俺が好きな人は、シュゼットだけだよ。約束を違えたことなんて、今までに一度もない」

 ……私以外、好きにならない……?

 なれない?

 私がクロードに、そう約束させたから?