早口で畳みかけるように言い切った私に、クロードは驚いているようだった。

 現在、私が働いているローレンス侯爵邸では、多くの使用人を抱えている。

 けれど、私一人だけがこの特別な遠方への届け物の仕事を請け負っていた。

 私以外の彼らには、ちゃんと家族が居て、拠り所になるものを持っている。

 ……けれど、家出をして祖国から離れている私一人だけは違っていた。

「どうして……届け物の仕事に、ドレスを着る必要があるの?」

「飛空艇の中では貴族令嬢としてドレスでないと、浮いてしまうのよ。クロードだってわかるでしょう……私はもう貴族令嬢でもないから、仕事しないと生きていけないの」

「ああ……そのことについては、何の問題ないよ。これからシュゼットは、俺が養うから」

 何でもないことのようにさらりと返されたその時に、私はカアっと顔が赤くなった。

 クロードには、もしかして、今の私が可哀想に思えた? こうして仕事を持ち、立派に一人で自活しているというのに!

「駄目よ! ……何を言っているの。私たちは、結婚する訳でもないのに」