「ああ……シュゼット。とりあえず……久しぶりに会った俺たちには、積もる話も多いから、とりあえず場所を変えようか」

 近づいたクロードの大きな手で、さりげなく背中を押されて、私は同意し頷いた。大人の男性らしい、こういう時に気遣いのある最適な対応。

 それに、優しいところは、今も変わらない。

「ありがとう。クロード」

「そろそろ晩御飯の時間だし……一緒にご飯でも食べよう。シュゼット。だが、君の服に合わせてレストランを選ぶと、俺は部屋にジャケットを取りに帰らなければならない。そこの大衆向けには見せつつ、値段がとても高級な酒場……であれば、すぐに入れると思うがどちらが良い?」

 レストランには明確な服装規定(ドレスコード)が存在しているから、クロードは身軽な服装を一度着替えねばならないと伝えた。

 その間、私を待たせてしまうことになるから、先んじて気を使ってくれたのだろう。

「高級酒場で、構わないわ。私は一人旅だから、そういう場所に行ったことなくて……いつか行ってみたいとは思って居たの」

 酔っ払いが集まる場所に女一人で行くことが、いくら治安が良いとは言え、どれだけ危険なのかは皆知るところだろう。

「そういう話も、ゆっくり聞くよ。それでは、店へと入ろう」