クロードはどこか、うんざりしたように言った。それほど、周囲からのテレーズ姫と結婚しろという圧が強かったのかもしれない。

「それは……確かにそうよね」

 私は苦笑した。そんな勇者クロードがお姫様との結婚を拒んだ理由は、私との幼い頃の約束だと知ればどんな顔をするかしらね……。

「ねえ。クロードって、どうして、私のこと好きなの?」

 これは、私は前々から聞きたかったことだ。クロードほどの人が、私のことをずーっと思い続けてくれていた。

 それは嬉しいことだけど、理由があるなら教えて欲しい。

「……好きに理由とかいる? 三歳の頃からシュゼットのことを好きなんだから、本当に一生好きだよ」

 クロードは真面目な顔をして、それを言ったし、私は照れてしまって顔を熱くした。

 聞いたのは、私のはずなのに……。

「……私、今更貴族令嬢に戻るの?」

 トレイメイン伯爵家に戻るということは、そういうことだ。両親が既に貴族として生活しているのなら、私も社交界に戻ることになるのだろうか。

「……けど、俺と結婚するし、どっちでも良いよ。貴族に戻らなくても」