そして、ギャビンは天井に向かって飛んでいなくなった。いつもながら、物体をすり抜けることが出来るって、本当に凄いわ。

 今頃は飛空挺より早く飛んで、王様の元に向かっているのかしら。

「あいつ、大丈夫かな。興奮していたから、変な風に伝えないと良いけど……まあ、良いか。テレーズだって、いい加減俺を追い回すのも大変だろうし。俺がちゃんと仕事すれば、彼女の好きな人との結婚だって認められる。ギャビンがシュゼットのことを報告すれば、すべては丸く収まるはずだ」

「そうなの?」

 リベルカ王国のお姫様が勇者と結婚することは通例だとは聞いたけれど、クロードが勇者として仕事するようになれば、彼女が他の人との結婚が認められるということ……?」

「うん。勇者としての能力をもって、王族として王国に寄与せよという話だからさ」

「あ……そうか。お姫様と結婚すれば、クロードも王族になるものね」

「そうそう。だから、国王は俺と姫と結婚させたがっているんだよ。王国の治世者の一員となれば、王国のために働くのは当然で、いくらでも無料で使えるから」