「わかった。助けても良いけど、ひとつだけ条件がある」

 私は何を言い出したのかと息をのんだし、背後に居て私の首に刃物を突きつけているローレンス侯爵だって同じはずだ。

「……条件って、何なの?!」

 我に返った私は、クロードに叫ぶように言った。

「……これが終わったら、ご両親に会いに行こう」

「そんな話してる場合じゃないでしょー!」

「困難を共に乗り越えたせいか、仲良かったよ。今ならシュゼットも冷静に話し合い出来るはずだ。人の関係は時が過ぎれば変わっていくものだよ。良い悪いにつかずね。色々誤解あったかもしれないけど、一回勇気出したらなんだこんなもんだと思うものだよ」

 今、そんなことを話し合っている状況ではないはずなのに!

「もうっ!! わかったから!! 良いから早くー!!」

 彼の条件を受け入れると私がそう叫ぶとクロードの姿はいきなり消えて、背後から抱きつかれていた圧はなくなり、振り向けばローレンス侯爵は片手で頭を持たれてぶら下がっていた。

 その手に持っていたのは……ペン? あ。私の首に当てられて刃物だと思って居た物は、何の危険もないペンだったんだわ。