「シュゼット。君は本当に可愛いね。どこからどう見ても、上流階級の出だ。誰も君のことを、平民であるなんて思わない。言葉遣いや所作を見れば、育ちはどうしても出てしまう……君は裏路地で蹲っていたあの時が懐かしいね。私が君をあそこから連れ出さなければ、すぐに売られて娼館行きだっただろうけどね」

 ……それは、その通りだった。私はだから、ローレンス侯爵に感謝して……だけど。

「これまで私に宝石の密輸を、手伝わせていたんですね」

 私の言葉を聞いてローレンス侯爵は、にこにこと微笑んで頷いた。

「ああ。知っていたのか。話が早いねえ。そうなんだよ。どうしても、それは誰にも知られたくなかった。君が私の管理下から離れると言い出すなら、こうするしかなかったんだよ」

「私の口止めのために、こんなにも大がかりなことを?」

 信じられなくて絶句した。

 けれど、それだけ宝石の密輸は儲かる犯罪なのかもしれない。使用人への金払いも良く、裕福なローレンス侯爵。

 違法な犯罪行為で簡単に儲けたお金であれば、使う時にも軽々しくなってしまうものなのかもしれない。