「心配したんだよ。シュゼット……逃げ出したようだね。あれは腕の良い奴らとは聞いていたが、結果を見ればそうではなかったようだ」
にっこりと微笑んでいる。いつも彼が使用人たちに見せるような、優しい笑顔。
けれど、どうしてだろうか。ローレンス侯爵の目から、底の見えない深淵のような暗闇を感じてしまうのは。
「……あの人たちに、私を誘拐させたんですね。どうして」
理由は明白だったけれど、私は聞いてしまった。もしかしたら……何かの勘違いであると言って欲しかったのかもしれない。
そんな訳があるはずもないのに。
「ああ。誘拐はさせたね。今回は手紙を渡して貰う機会ではなかったからね。君を殺すかどうやって存在を消すか。ただ、それを実行する機会だっただけなんだよ」
謳うように滑らかに吐き出される、信じがたいほど酷い言葉。
「……ひどい」
声が震えてしまった。私が辞めようとしたから、口封じのために殺そうとしたんだ。
にっこりと微笑んでいる。いつも彼が使用人たちに見せるような、優しい笑顔。
けれど、どうしてだろうか。ローレンス侯爵の目から、底の見えない深淵のような暗闇を感じてしまうのは。
「……あの人たちに、私を誘拐させたんですね。どうして」
理由は明白だったけれど、私は聞いてしまった。もしかしたら……何かの勘違いであると言って欲しかったのかもしれない。
そんな訳があるはずもないのに。
「ああ。誘拐はさせたね。今回は手紙を渡して貰う機会ではなかったからね。君を殺すかどうやって存在を消すか。ただ、それを実行する機会だっただけなんだよ」
謳うように滑らかに吐き出される、信じがたいほど酷い言葉。
「……ひどい」
声が震えてしまった。私が辞めようとしたから、口封じのために殺そうとしたんだ。



